鍵が壊れてしまう前には何らかの不調のサインがある

ほろ酔い気分で私の住むマンションの玄関前に辿り着いた。今日はお風呂に入るのも顔を洗うのもかったるい。でも化粧を落とさないまま寝るのは、さすがに年齢を考えるときついものがある。心の中で葛藤しつつ、でも一刻も早くベッドに倒れ込みたい気持ちでいっぱいだった。それなのに、そんな時に限って、である。ドアに鍵をグサリと差し込んだ瞬間、私は手に違和感を覚えた。なんだかひっかかるような振動が伝わってきたからだ。それでも早く家に入りたかったので、私はそのまま鍵をひねった。いや、正確にはひねったのは手首だった。あれ???よく見ると、鍵は鍵穴に縦に刺さったままだ。今横にしたはずなのにどうして?もう一度ひねってみる。もう一度、力を込めてひねってみる。さらに全力で力を込めてひねってみる。――開かない。えぇーっっ!?今度は鍵を引っこ抜いてみる。もう一度、力を込めて引っこ抜いてみる。さらに全力で力を込めて引っこ抜いてみる。――抜けない。えぇーっっ!?玄関前で途方に暮れながら、私はその日の朝のことを後悔していた。あの時ちゃんと管理人室に行っておけば…こんな夜中に困ることなんてなかったのだ。

その日の朝、鍵を閉めたときから、すでに違和感を抱いていた。鍵を回すときに途中でひっかかるような感覚がしたのだ。それは数日前から時々起こっていたのだが、そのときの引っかかり具合はそれまでのよりもずっと「異常」と呼べるものだった。黒板を金属でひっかくような不快感を抱いたほどだ。だけど何となく管理人を呼ぶのもおっくうだったし、何もなかったことにしてしまったのである。

真冬のマンションの廊下は底冷えするというのに、管理人にも連絡が取れず、立ち尽くしてしまった。鍵が壊れてしまう前には何らかの不調のサインがある。そのことを痛感したのだった。